高齢者になってからの生き方と現代日本社会の価値観

現代日本社会の価値観では、
高齢者になってからどう生きたらいいのか
ということについては空白であるように感じている。
ちょっと前までは『生きがい』ということが強調されていた。
生きがいづくりという名目で、趣味の活動を何かしましょうということが
ずっと言われていたように思う。
最近も社会福祉団体のホームページで、
「生きがいづくり」という理由で
カラオケセットなどを無料で貸し出ししていますという話を見て、
例えばパソコンやプロジェクター、会議用のマイクやスピーカーといったものも貸し出したりということだった。
さて、「生きがいづくり」と言われても
私たちは困ってしまうのではないだろうか。
例えば趣味活動は意図せずして生まれるものであるだろう。
例えば釣りが好きとか、ガーデニングが好きとか
どうしてそれが好きなのかと説明を求められてもたいていの人は困るだろうと思う。
趣味を持とうとして持つというのはなかなか難しい感覚である。
「生きがいづくり」という言葉には
高齢者になってからどう生きたらいいのかというテーマについて
現代日本社会がいかに答えを出せずに苦しんでいるかということが現れているように思う。

日本の自殺でもっとも多い年齢層は高齢者であると言われている。
また、理由としてもっとも多いと言われているのは病苦などの健康問題である。
ここに至る理由には、現代日本社会の価値観の空白もまた影響を落としているように感じている。
少子高齢化が日本の第一の問題にもなってきているが、
単に高齢者の人口が増えるというだけでなくて、
高齢者の社会での位置付けという問題もまた深刻なのではないかと思う。
今は定年年齢の引き上げや定年退職後の雇用などが問題となっているが、
それは単に現役世代期間を引き延ばすだけで、
現役引退後の人生をどう生きたらいいのかという問いの答えとはなっていないことは確かだろう。

現代日本社会の価値観で核となっているのは勤労者として働ける現役世代年齢層である。
勤労者として働くということを中心として、それ以外の世代が関係づけられている。
生まれてから子ども時代と青年時代を経て大人になるまで、
この期間はすべて将来勤労者として生きるための準備期間として位置付けられている。
日本の勤労者として何が必要なのか、そのための学校教育であることは事実であるだろう。
昭和時代であれば、女性は主婦として夫を支えるものとして、
やはり勤労者社会を補助するものとして位置付けられていたこともまた事実かもしれない。
今は男女共同参画そしてワークライフバランスという時代になったが、
やはり勤労者としての男女の立場を中心としたようなモデルであることは
否めないかもしれない。
結果として、今も昔も、勤労者世代を引退した後はどうするのかということについて
空白となっていることは事実なのではないだろうか。

私の祖父は働き者で、洗濯や育児などの家事をこなすし、
町内会活動でたとえば側溝清掃などを精力的にこなしていた。
小学校の横断歩道の旗振り当番なども積極的に行っていた。
一昔前であれば、町内会活動に力を入れたり、子育てを行なったりして、
勤労者世代を引退した後だからこそできるような何かも多かったのかもしれない。
しかし、現代は地域コミュニティが弱くなってしまったことは事実だろう。
核家族化が進み、さらに少子化も進み、地域のつながりも薄れていって、
現役引退後の世代ができる地域貢献や社会貢献の道が徐々に薄れていることは現実であるのかもしれない。

そもそも江戸時代などの昔であれば、長寿というのは尊ばれていた。
高齢者は非常に大事にされていたものだと思うが、
そこには何でも知っているという生き字引という要素があったかもしれない。
現代はインターネットを検索すればすべて分かってしまうような時代で、
高齢者だからこそできた役割を奪ってしまったのかもしれない。

私は「自己実現」ということを基本テーマの一つとしていつも語っているが、
なぜ自己実現や成長ということを語るかといえば、
それというのは一生をかけて行う人生の事業であるからである。
自己実現は単になりたい職業について終わりというものではない。
自分がどんな自分でありたいのか、自分のこれから成長していきたい先は何なのか、
それは死ぬまで生涯をかけて、もちろん高齢者と言われる年齢になってからも
現役を引退するような年齢になってからも、
永遠に続いていく営みである。
だから、高齢者になってからどう生きたらいいのかという個別の問題ではなく、
それは生まれてから大人になって亡くなるまで、
生涯を貫くテーマであると考えている。

とにかく現代日本社会をまわすことがありきというような価値観をこえていきたいものである。
私たちは私たちなりに、何歳になっても、死ぬ瞬間まで、
幸せを感じていきたいものである。

◆今日の写真
梅雨が続いている。
今年の梅雨は特に雨が多いような気がする。
全国では昨日は豪雨な地域も多かったとニュースでは報じているが、
みなさんの地域の安心を願わずにはいられない。

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